パティオ広場の夜は更けて5 パロディ吾輩は猫である2010 志茂田景樹の隊長のブログ作品集|志茂田景樹のWeb絵本-読み聞かせ劇場|しもだ-かげき|直木賞-児童書-作家

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志茂田景樹の隊長のブログ作品集 No.7

 

パティオ広場の夜は更けて5


吾輩はえもいわれぬいい匂いで、ハッと目を覚ました。
赤羽橋のうなぎ屋野田岩の特上のうな重の匂いである。
綾がそのうな重をうやうやしく捧げ持ち、通路に消えるところだった。
夏目家は東側で島崎剣村家と接しており、北側東角に玄関がある。
靴脱ぎ場から床に上がって西側に入ればリビングキッチンで、そのさらに西に通路を隔て北側にバスルーム、トイレ、本来は衣裳部屋の沙乃の部屋が並んでいる。
南側に夫婦の寝室、沙苦里の書斎、グレートデーブこと判官の部屋がある。
キッチンとトイレの間に、勝手口とそのための細い通路がついている。
そのドアの下部に仕掛けがあって内側からでも外側からでも吾輩が頭で押すと、吾輩が通れるだけのスペースが上へ押し上げることができる。
それは余談で、通路から綾が出てきてキッチンへ入った。
吾輩は勇者のように落ち着き払ってソファから下りると、通路へ入った。
判官の部屋の前に特上のうな重の箱が置かれている。
吾輩はしずしずと重箱の前へ歩いて、右前足の爪にその蓋を引っ掛けて開けようとした。
その一瞬前、ドアがさっと開いた。
吾輩は右前足を引っ込め、そっぽを向いて何食わぬ表情を作った。
「なんだ、拾麿か。こっちへ入れよ」
グレートデーブは猫なで声で、吾輩を呼んだ。
の手は食わぬ、と吾輩はさらにそっぽを向いてパサリと髭を一振りした。
いつかも猫なで声で呼び入れられて、ひどい目にあっている。
グレートデーブは思い立って何かを考案することがあり、そのときは充電式のノラ猫撃退器の試作器なるものを完成させたばかりだった。ステッキほどの長さの柄に、針金製の熊手型のものがついている。
グレートデーブは、その試作器の熊手型の部分を吾輩にあてた。
吾輩は、ギャン、と我ながら奇怪な声を発して、1メートルほども飛び上がった。
100ボルトだから死ぬことはないが、我ら猫族には心臓が張り裂けそうな電撃ショックである。
グレートデーブは逃げ回る吾輩に何度も熊手部分を押し付けてきた。
ドアは閉められており、逃げ場のない吾輩としてはたまったものではない。
吾輩は押し付けられるたびに、ギャンギャン1メートル前後、飛び上がった。
飛び上がりながら、これは死んだ振りをするにしかずと考え、着地するや死んだ振りをした。
かえって長く押し付けられるかもしれないと思ったが、そのときは窮鼠、いや窮猫人を噛むで噛みつくしかない、と覚悟した。
「なんだ、死んじゃったんかよ、チェッ、情けねえ猫だ!」
判官は吾輩を足で蹴り動かしながら、ドアを開け、外へ押し出した。
バタンとドアが閉められるや否や、吾輩は身を起こし、ドアに向かい、
「情けがねえのはお前だろ! このサディスト野郎!」
と、毒づいたものだ。そんな前科があるから猫なで声を出されても、おいそれと入るわけにいかぬ。
しかし、えもいわれぬ匂いに誘われて振り向くと、グレートデーブは重箱を手に、
「少し分けてやるよ」
と、晴天霹靂の言葉を吐いたのである。
目も優しく穏やかに輝いている。
ノラ猫撃退器のモルモットにされたときは表情こそ柔和だったが、目は奥深くから射るように酷薄な妖光をたたえていた。それに気づいたときにはドアは閉められていたのである。
多重人格の気があるな、と吾輩は納得して部屋に入った。
実際、優しかった。
「拾麿、お食べ」
重箱の蓋に蒲焼を4分の1ほど、ご飯をゴルフボールほど取り分けてくれた。
吾輩はがつがつと食らい、さすがは野田岩の特上うな重よと充分、堪能した。
「いつもいつもキャツトフードじゃたまんないよな。でも、おふくろの作るものよりましだぜ、あれは料理音痴だから」
グレートデーブはつぶやく。
「おふくろがもし料理がうまかったら、僕、リビングまでは出ていくのにな」
ぼやくように、呟きを続ける。
吾輩が食べ終わると、グレートデーブはやっと箸をとり、食べだした。
吾輩は10秒ほど、グレートデーブを観察した。
身長は170センチそこそこ。体重は少なめに見ても、100キロ近いだろう。
太るのは過食と運動不足にまぎれもない。
実はこのうな重も間食のようなものである。
このままでは短命に終わるだろう、と吾輩はいたわしい思いに駆られて、グレートデーブの顔をあらためてまじまじと見つめた。
とたんに、顎の関節を震わせて笑ってしまった。
キューピッドのような髪型をしている。
その髪を真っ黄っ黄に染めている。なんだか春風亭小朝みたいである。
月1回、自分の意思で判官が我が家を出ていく日がある。気に入りのヘアサロンの表参道のZAZAまでカラーリングとカットをして貰いにいく。
その日だけはひきこもりがうそのように、晴れ晴れとした表情になる。
「お前、僕の部屋の中を探検したら」
まじまじと見つめられてグレートデーブは照れたらしく、そう言った。
吾輩は大いに好奇心をくすぐられ、遠慮なくそうさせて貰うことにした。
そうして、実に興味深々な探検になったのである。

〈続く〉

志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ KIBA BOOK 志茂田景樹事務所
 
 

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