パティオ広場の夜は更けて3の続き パロディ吾輩は猫である2010 志茂田景樹の隊長のブログ作品集|志茂田景樹のWeb絵本-読み聞かせ劇場|しもだ-かげき|直木賞-児童書-作家

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志茂田景樹の隊長のブログ作品集 No.5

 

パティオ広場の夜は更けて3の続き


「モンちゃん、なにがあったんだよ?」
吾輩はモンちゃんと八の字を描くように、ひんやりした地面に腹這いになるなり訊いた。
モンちゃんは顔を上げ、つかの間、吾輩をじっと見た。
吾輩はこの視線に弱い。いつもはしきりに瞬きして照れ隠しをする。
そうでもしないと、その金色の視線は心の内まで刺してきて、チクチクチクチク疼かせられる。
でも、このときは違って、金色の瞳はくすんで灰色がかり、吾輩の心まで刺し入ってくる力はなかった。
モンちゃんの瞳は、強いストレスがかかるとグレーになる。
吾輩はモンちゃんが可哀想で痛ましくて、右前足をモンちゃんの左前足に重ねて、
「すべてを話してごらん」
と、優しくうながした。
「うん」
モンちゃんは小さく頷いてから、少し声を上ずらせて話し始めた。
モンちゃんの声は直径1・5センチぐらいの鈴の音だと思ってほしい。
その鈴の音が悲しみをたたえて上ずっている。
「今朝、5時54分、母が亡くなったの。朝食前のボイストレーニングを始めてすぐにしずみさんのケータイにメールの着信があったの。そのメールを覗き見たとたん、私は失神したの。だって、母の飼い主から母の死を知らせる内容だったんですもの」
「そりゃ、ショックだったよね。モンちゃん、可哀相に。お母さんもね」
吾輩は顔を心持ち上向け、まぶたを軽く閉じてすすり泣きを始めたモンちゃんの頬を、右前足でそっとたたいた。
人間が今の行為を目撃したらスケベーな黒トラがたおやかな白猫にセクハラにおよんだと誤解するかも知れぬ。
我々猫は人間の言葉を解するが、人間は猫言葉をまったく解せぬ。それに我々のふだんの会話は人間にはほとんど聞きとれぬ声域で行っている。
人間は我々が数匹、雑草が生えた空き地などに離れ離れに坐っていると、何をしているのか、と首を傾げる。
しかし、あれは座談をしているのである。
雑談の場合もあれば、真剣な会議の場合もある。
我々はまたパソコンや、ケータイのモニターに写る文字も解することができる。
正確に言うと読めるのではなく、何を伝えようとしているのかを察知できるのである。
人間的に言えば、超能力ということかもしれぬ。
モンちゃんの母については、モンちゃんによく聞かされたからかなりのことを知っている。
モンちゃんは鎌倉の女流書家の飼い猫白蓮の双子の子として生まれた。双子の妹のキャメルとともに、いったん島崎家に貰われてきた。
島崎剣村とその女流書家は旧知の間柄で、59歳の剣村の妻の蘭蘭はまだ23歳という若さだが、これが子なきを寂しがっていた。それで剣村が鎌倉まで出向き、貰ってきた。キャメルは茶と白のブチだったが、蘭蘭はキャメルを気に入り、モンちゃんには冷たかった。
2号棟の2階に住むソプラノ歌手石船しずみがモンちゃんを見て気に入り、貰いうけて飼うことになった。
皮肉なものでそれから1年も経たないうちに、キャメルは急病に罹って死んだ。
蘭蘭は、もう生き物を飼うのはこりごり、とかで、今はミドリガメを飼っている。
ミドリガメも生き物なのだが。
女流書家はモンちゃんが石舟しずみに飼われたことを知って、剣村にしずみを紹介してもらうと、ちょくちょくモンちゃんの様子を聞いてくるようになった。
そんな経緯があって、吾輩もモンちゃんの母の白蓮の動静を少しは知るようになったのである。
「お母さんはどのような亡くなり方をしたんだい?」
吾輩が訊くと、モンちゃんは号泣を始めた。
これは耳を澄ませば人間にも聞こえるだろう。

〈続く〉

志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ KIBA BOOK 志茂田景樹事務所
 
 

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