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志茂田景樹の隊長のブログ作品集 No.49

 

カイ君の同類は苦難の道を行く3


  沙苦里はソファーに戻り、軽い咳払いを一つして、上体をぴんと伸ばしてから言った。
「夏目、冬鼻、野見島のそれぞれのイニシャルをとって仮称NFN基金を創ろうという話がうちと冬鼻家の間で出ています。野見島家にもぜひご賛同いただきたい」
「それはなんの基金ですか?」
「沙乃が来年生むことになる子は、言うまでもなく夏目家と野見島家の血を引いていることになります」
「そうですな」
「冬鼻夫婦の実子として育てられますが、冬鼻家にすべておんぶに抱っこではうちと野見島家としては申し訳ないと思います」
「別に私のところは申し訳なくもないですが・・・」
野見島は分厚い掌を左右に振って苦笑した。
「野見島さん、生まれればあなたのお孫さんですよ。犬猫のやり取りではあるまいし、
他家の子になっていても草葉の陰から、いや、陰ながら、何かのかたちで関わっていきたいというお気持ちはあるはずです。違いますか?」
吾輩は、犬猫、と猫を犬と一緒にした沙苦里に異議を唱える意味もあって、
咳払いを、ニュン、ニュン、ニュン、と三連発した。
沙苦里は意に介する様子もなく、野見島に畳みかける。
「あなたはペットの菩提を弔う事業をおやりになっている。それはぺっトが安らかに彼岸の彼方に旅立たれることを心から願うとともに、埋めようがない喪失感に見舞われた飼い主の心のケアも視野にお入れになってのことではありませんか?」
こういう話には澱みがない沙苦里に、野見島はたじたじである。
「ま、ま、それはそうですがね」
「ことは犬猫ではなく、あなたのお孫さんの未来に関わることですよ」
沙苦里は腰を少し浮かせた。
おそらく、軽い痔の気があるので、ムズムズしたのだろう。しかし、野見島はまた逆立ちをやられてはたまらない、と思ったらしく、右手を沙苦里の胸に向かって突き出して大声を張り上げた。、
「わかりました。趣旨によっては賛同させて貰います。それで、仮称NFN基金はどのように運営していくのですか?」
「3家がとりあえず三百万円ずつ拠出し、生まれる子の育英資金に当てるということです。冬鼻さんは初めお断りされたが、私がぜひにもと強く迫ったら、野見島さんがご賛成ならば、という条件を出された。まっ、三家が来年に生まれる子の出生の秘密を厳守するという契約の意味もあるとお考えください」
「そういうことであれば、その盟約にわが野見島家も喜んで加わりましょう」
「いや、これで一件落着です。野見島さん、まずは二人だけで祝杯を挙げましょう」
沙苦里は小さなキッチンに立った。用意がいい。ポットには湯が沸いている。ドライタイプの高級キャットフード「霜降ウルトラSS」も皿に載っている。
吾輩は昨夜の沙苦里と綾の会話の一部を思い浮かべた。
「沙乃はもともと子供を生みたかっただけで、育てることはあまり考えていなかったみたい。だから、ヨーロッパ旅行ができて、スイスで出産できると知ったら、大喜びだったわ」
「さもありなんだ。動物園で買われている動物の牝にもその傾向が見られるが、今の若い女は子は生んでも子育ての本能が薄れ、育児放棄や、育児ノイローゼに陥りやすい。核家族化の影響で、祖母、母から学ぶ育児の道筋がしだいに細くなって、そのノウハウを学習しづらくなくなったせいもある」
「私は母からちゃんと教えられました。沙乃にもきちんと教えることができます」
「いや、一般的なことを話している」
眉をキリリとひくつかせた綾をなだめて、沙苦里は話を続けた。
「沙乃の妊娠に気づき、その相手まで教えてくれた大蛇川のカミサンには今月中に沙乃は堕胎手術を受けたと告げてほしい。あのカミサンが沙乃の妊娠を誰かに告げていたとしても、第二報でおろしたと告げる。それで、幕は閉じられるだろう。あとは明日会う野見島さんと話を決めれば秘密は三家だけのことになる」
吾輩はそのときは聞き流していただけだが、今、沙苦里の話を聞いてこういうケースでは意外に権謀術策をめぐらせることに感心した。
テーブルではもう酒盛りが始まっている。
「野見島さんも芋のお湯割りがお好みとは嬉しいことです。それは赤霧島ですが、いかがですか・」
「いや、私もこれはよく飲んでいますよ。それより、このつまみはいけますな。輸入品ですか?」
野見島は「霜降ウルトラSS」を2個、口の中に放り込みながら訊いた。
吾輩はかすかに顎の関節を鳴らして笑った。
「いや、国産です。鹿児島牛の霜降りを使っていると聞いていますが、お口に合いますか?」
「いやあ、香りがよく淡白な味わいが、芋焼酎の風味を損なわず、なんとも好ましい」
野見島はすでに顔を真っ赤にしている。
あまり強いタイプではないらしい。
我輩はばかばかしい会話にあほらしくなり、さて、と腰を上げた。
「この頃、捨て犬に北海道犬がやたら目立つそうですな」
話題を変えた野見島の言葉に、我輩は出口に向かいかけた足を止めた。
(続く)

志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ KIBA BOOK 志茂田景樹事務所
 
 

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