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志茂田景樹の隊長のブログ作品集 No.26

 

問答無用の秋祭り2


  金髪フグだった。
倒れているというより、仰向けに寝ているといったほうが正しい。
黒いレースのレギンスを履かせた両脚をほぼ大の字に開き、がーがー
鼾をかいている。
「兄貴ンところの娘じゃないか。さっき通っていったパトカーは大通りからここへ曲がってきたはずだから、当然、気がついてるはずだ。なぜ、放置したんだろ?」
弁天丸が首を傾げる。
「パトカーが通っていったあとに金髪フグが現れて寝たんだろう。寝てからまだいくらも経っていない感じだ」
吾輩は弁天丸に答えながら、どうしたものかと思案した。
昨日の昼下がり、沙苦里と綾はともに深刻な表情で金髪フグのことを相談した。
「沙乃には問いただしたのか?」
「まだよ。問いただすのは納涼祭りがすんだらにしよう、とあなたが、朝、言ったでしょう」
「うん。お祭りの最中は気が騒いでいるからな。訊くほうも訊かれるほうも頭に血が上りやすい。それはそうと沙乃は昨夜も午前様だったろう?」
「あなたよりは早かったでしょう」
「きみはソファに寝て、テ、とか、ぺ、とか寝言を言っていたが、あれはスペイン語の発音練習を夢の中でやっていたのかね?」
「知りません」
綾は強く首を振ったが、吾輩はつい吹き出したものである。
アルコールにそれほど強くない綾は小竹にショッキングな事実を告げられて動揺していたせいもあって、いつに無く荒れた飲み方だった。
小竹と赤ワインで乾杯後は、沙苦里の芋焼酎を取り出し、ロックでぐいぐい飲んだ。
小竹とアカペラで合唱し、チークを踊り、はしゃぎまわったから、ひきこもりのデーブも何事かと様子見に現れたほどだった。
9時近くに小竹を送り出した後は、ソファに横になるや否や、鼾をかきだした。
それでも、午前0時過ぎに金髪フグが帰ってきたときは、つかの間、目を覚まして顔を上げた。
金髪フグは綾に只今とも言わずに自室へ向かったが、それを見ると綾もすぐに眠りに戻ってしまった。
オハマや、大蛇川と納涼祭りに出かけて飲んでいた沙苦里が帰宅したのはそれから30分ほどしてからで、抜き足差しリビングに入ってきた。
しかし、綾が正体不明の有様でソファに寝ているのを見ると、にやっと笑って、
「酔いつぶれたカミサンはあどけないのう。でも、ここまで飲むにいたった必然は何かいな?」
と、呟いた。
この直後、綾は、テ、とか、ぺ、とか寝言を洩らしたのである。
綾はBSで放送されている韓流ドラマにはまっており、おそらく、それに出演しているイケメンの俳優の姓がテ、とか、ぺ、だったと思うが、吾輩はあまり興味がないので正確には知らぬ。
ともかくも、朝になって沙苦里と綾は無言で食事をすませた。
綾は金髪フグのことに加えて二日酔いもあって、実に不機嫌な顔だった。
沙苦里はそれを自分が午前様帰宅をしたせいだと受け取り、おどおどしながら黙々と、箸だけは忙しげに働かせたものである。
金髪フグがリビングに現れたとき、沙苦里は逆立ち歩きの最中だった。
「ご飯は?」
綾が訊くと、いらない、と金髪フグは首を振りながら洗面所に入った。
この家は洗面所からバスルームに入る造りになっている。
金髪フグがバスルームに入った気配を悟って、綾は沙苦里に近づき、
「あなた、お話があるの」
と、小声で言った。
「なんだい?」
逆立ち歩きをやめて、沙苦里は静止した。
下方にある沙苦里の顔の中の両目が綾を見上げた図は、本来とは逆に瞳が動くのでいささか不気味な見ものである。
「沙乃が妊娠しました」
とたんに、体を支えてまっすぐ張っていた両腕は熱波を受けた飴棒のようにぐにゃりと曲がり、一瞬後、どたんと背中で床を打ち、沙苦里は仰向けに倒れていた。
「誰の子なんだ?」
「教えてくれたのは大蛇川さんの奥さんです・・」
綾は小竹に聞いた話を簡潔に沙苦里に伝えた。
沙苦里はさすがに動転したらしい。
「週刊誌を買いに行ってくる。大蛇川の奥さんの話が正しいかどうか綾に問いただしておいてくれないか。いや、納涼祭りが終わってからにしたほうがいいか」
早口で言い残して出かけてしまったのである。
買い物にしては昼過ぎになってようやく戻ってきた。
その間、綾はとっくに外出している。
そうして、始まった相談も短時間で終わり、沙苦里は書斎に閉じこもった。
気がかりはことがあると、書斎に閉じこもる癖があり、吾輩は沙苦里にはひきこもりの資質があるとにらんでいる。
夕方近く、金髪フグは友達4人を連れて戻ってきた。松竹梅女子大の同級生二人とその二人のそれぞれのボーイフレンドである。
沙苦里は金髪フグのお腹の子の父親がいるのではないかと思ったらしく、ひょこっと顔を出したが、二人はともに大学生でどう見ても中2ではない。
5人は間もなく祭り見物に出かけていった。
それからどのように過ごして、今、ここで金髪フグ一人だけが寝ているのかは
神のみぞ知ることである。
「それにしても困ったな。沙苦里、綾に知らせたくてもその手段がない」
吾輩が途方にくれたとき、24時間営業の城南薬局から白衣を着た中年男が出てきて金髪フグを見るなり、
「ありゃ、夏目先生のところのお嬢さんじゃないか。しょうがないな、ここいらは変なやつも通って物騒なんだよ」
と、そばにきて屈んだ。
そして、金髪フグの上体を起こし、呼びかけ始めた。
吾輩は沙苦里と金髪フグのことをよく知っているらしい人間の登場に胸をなでおろした。
少し仙台坂よりの細路地から人影が現れた。
寝巻き姿のポソンのおばあちゃんだった。
おばあちゃんはこっちを見るなり立ちすくんで叫んだ。
「か、か、か、介抱泥がいるー!」
おばあちゃんの後ろに猫影が見える。
フーテンのノラだった。

〈続く〉

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