可もなく不可もなくでは不満が残る8 パロディ吾輩は猫である2010 志茂田景樹の隊長のブログ作品集|志茂田景樹のWeb絵本-読み聞かせ劇場|しもだ-かげき|直木賞-児童書-作家

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志茂田景樹の隊長のブログ作品集 No.22

 

可もなく不可もなくでは不満が残る8


  吾輩は庭へ出て隣家の庭の様子を窺った。
庭にカンバスをセットした三脚を立て、その前に置かれた椅子にかけ、なんと蘭々が絵筆を振るっているではないか。
島崎剣村より36歳も年下で、まだ23歳の蘭々は、ぽっちゃりした顔立ちで、体つきもふっくらしている。
栗色の髪はショートにして、後頭部は刈り上げている。
どことなく男の気をそそる雰囲気を放っており、剣村は蘭々によその男が近づくと目に険を浮かべる。
海外旅行の費用を得るためにキャバクラでバイトをしているときに客としてきた剣村と知り合い、その1ヵ月後にはアドリア海、エーゲ海、地中海をクルーズする豪華客船の船上にいた。
もちろん、剣村も一緒で、剣村をパトロンにすることで、当時、19歳の蘭々は夢を叶えたわけである。
「島崎さん、40日の船旅の費用を作るために、建売りのお住まいを売ったんですって。
まるで(百万本のバラ)に出てくる貧しい絵描きみたい」
「しかし、百万本のバラを貢いだ相手はれっきとした女優だよ。お隣の蘭々さんはキャバクラ嬢じゃないか。まっ、船旅から帰って蘭々さんをモデルにした裸婦のシリーズが売れて、ここも買えたし、充分もとはとっただろう」
「蘭々さんはああ見えてもアゲマンなのかしら?」
「きみね、アゲマンは古い。かりにも星泉大学人間科学部准教授の夫人だろ。もっと・・あ、いいや。(猫の目人の目)のネタにしよう。わが細君の古びた意識と堂上公家の家柄に生まれた拾麿の爪を噛む癖の相関性か、これはいい」
このときの沙苦里夫妻の会話で吾輩は剣村と蘭々が夫婦になった経緯を知ったのであるが、吾輩に爪を研ぐ癖はあっても噛む壁はない。
相変わらずいい加減なことを考える男だ、とムカッときたが、アゲマンとはなんだろう、と気になった。
沙苦里が綾のレベルに合わせていることもあるが、二人の会話に出てくる言葉で吾輩にわからぬものはない。
しかし、アゲマンは知らぬ。あとで大家に聞いてみようと思ったが、聞き忘れたままなので今もって知らぬ。
ところで、蘭々が絵筆を振るうのを、吾輩は初めて見た。
一体全体どんな絵を描くものやら。吾輩は剣村の気配が庭にないのを確認してから、島崎家の庭に入った。
蘭々の背後に回る。そして、うなった。
12号ばかりのカンバスに描かれつつあるのは、首から上が猫で、首から下が裸婦の妖怪だったからである。
妖怪というのもおどろおどろしいので、猫女人とでも称しておこう。
猫女人は芝生に横たわり、生き生きとして好感を抱かせ、健康的なお色気を放っている。
筆致は大胆で、個性にあふれている。
つまり、腕前は折り紙をつけてもおかしくない域に入っている。
待てよ、と吾輩は首をひねった。
いつだったか、麻布十番にある画廊で剣村が個展を開いたので、吾輩も迷い込んだふりをしてちょいと覗いて見たことがある。
その剣村の絵と今見ている蘭々の絵は筆勢といい、色使いといい、感覚といい、驚くほどの共通点がある。
剣村の指導よろしきを得てかくも上達したか、と吾輩はまたうなる。
ところで、猫の顔は白毛におおわれ、モンちゃんがモデルではないかと思わせる。
蘭々はパレットに作った金色を細筆に含ませ瞳を描いた。
やはり、モンちゃんだ、吾輩は数歩、前へ出た。
蘭々が気づいて細筆の柄の部分で吾輩の額をたたいた。
「拾麿ちゃん、こんにちは」
日除けの麦藁帽子をゆらりと振って、こう続けた。
「モンちゃんだとわかったのね。いずれ拾麿ちゃんもモデルにして描くからね。このシリーズは前のシリーズより人気を博しそうよ」
妙なことを言う、と吾輩は蘭々の言葉にひっかかるものを覚えた.。
直後に、吾輩は家の中から剣村が出てくる気配を感じとって、とっさにアジサイの花壇に飛び込んだ。
「蘭々、スイカを持ってきたぞ」
剣村のかすれ声が飛んだ。
吾輩はモンちゃんが癒し場にしている谷間に入った。
モンちゃんはやはりいた。
吾輩はモンちゃんのそばに、弁天丸が坐っていたのでびっくりした。

〈続く〉

志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ KIBA BOOK 志茂田景樹事務所
 
 

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