可もなく不可もなくでは不満が残る7 パロディ吾輩は猫である2010 志茂田景樹の隊長のブログ作品集|志茂田景樹のWeb絵本-読み聞かせ劇場|しもだ-かげき|直木賞-児童書-作家

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志茂田景樹の隊長のブログ作品集 No.21

 

可もなく不可もなくでは不満が残る7


  吾輩は小竹の言葉を待った。
「三田のほうにある宇宙久遠寺の息子さんよ。たしか中学2年生だったと思うけど」
小竹は綾の顔色を窺い窺い言った。
「あら、それ聞いたことがあるわ。かなりの名刹寺でしょう?」
「奥様、久遠寺はどこかの宗派の総本山ですけど、こっちの宇宙久遠寺はペットのお寺なんですよ」
「えっ、そんなのがあるって聞いたことがあるけど、そこの坊やなの?」
「ええ、少しませた感じの子で、ウマヅラという綽名を持っています」
「馬面、馬みたいに顔が長いの?」
「いえ、ウマヅラという名の魚がいるんです。カワハギの仲間で、口が小さくてとんがっていて、口から目までの距離が長い魚です」
吾輩は聞いていてこらえきれずに笑い出した。
金髪フグに口のとんがったウマヅラ中学生の取り合わせは、人間には悪いが愉快千万である。
「それに、奥様、ペットのお寺さんというのは儲け主義でとてもおカネがかかるんです」
「どんな風に?」
「ペットの葬儀一切を含め、納骨堂の権利も売ってくれるんですが、永代供養料も前払いでしてね。なんだかんだでかなりの費用がかかります。でも、宇宙久遠時は費用がかかっても設備が完備し、雰囲気が荘厳で浮かばれるって、ペットロス症候群の檀家にはわりと評判がいいんですよ」
「浮かばれるって、ペットが、ってことね。そう言えば、今年の1月、お宅のチワワの・・」
「オロチーロです」
「オロチーロちゃんが亡くなってのお葬式に、うちの宿六も参列したわね。そのとき、その宇宙久遠寺でやったのね?」
「そうなんです。あのときは有難うございました。うちの主人はあれで神経質なもんですから、しばらくペットロス症候群の症状に悩まされましたが、夏目先生によく飲みに誘っていただいたお陰で早く立ち直ることができました」
オロチーロは6歳牡のチワワで子のない大蛇川夫婦は、それはそれは目に入れても痛くないほどに可愛がっていた。
特に大蛇川の可愛がりようは常軌に逸したものがあって、外出するにもベビーカーに乗せて押して歩いていた。
ここへも1度連れてきたことがある。
大蛇川はオロチーロを膝に乗せて、しきりにその体を愛撫した。
吾輩は向かいのソファーにいるオロチーロを薄目を開け、観察した。
オロチーロは吾輩をずっと見続け、吾輩が少し目を見開くと、大袈裟に尻尾を振り回し、媚びてきた。
むろん、吾輩は無視した。
吾輩はぺトミンの猫も好かぬが、犬のペットはもっと好かぬ。
今の人間は犬も猫も人間に養われて従属している家畜として見ているが、昔の人間は犬と猫を区別し、ちゃんと猫格を認めていた。
今でも犬畜生と蔑称しても、けして猫畜生とはどんな人間も口にせぬ。
ぺトミンには繋がれている猫もいるが、本来、猫は繋がれるような辱めは受けない。
犬が繋がれる大きな理由は、猫に比べるとだいぶ知能の低い犬に人間との関係を知らしめるためである。
下層階級に多く飼われていた繋ぐにも値せぬと見られた犬は、放し飼いにされた。
現在、その類の犬はほぼ絶滅し、片田舎で細々と野犬として生き長らえているのみである。
話が脱線したが、オロチーロの葬式に沙苦里が参列したのは、なかば好奇心からだったに違いない。
夜更けにひどく酔っ払い、喪服姿で帰ってきて、目を覚ました吾輩に、
「いやあ、拾麿よ、オロチーロはお前ぐらいが入る小さな棺に入れられて火葬になったが、ちゃんと祭壇があるところでな、坊さんがきてお経を読んでもらって果報者よ。よし、お前にも葬式を出してやるぞ」
と、意気込んで言ったが、さてはその夜がオロチーロの通夜兼告別式だったと見える。
ところで、ぺトミンはともかく、我ら猫族に葬式は無用に願いたい。
土に生まれ、土に還る自然の理に、なんの儀式もいらぬ。
そんなことをやられたら、自然のご先祖様に申し訳が立たぬ。
オロチーロを亡くしてからの大蛇川は、一時150センチあまりで80キロあった体重が52キロまでに激減した。
沙苦里が知人の心療内科医を紹介し、5ヶ月通院してようやく旧に復したほどだった。
「宇宙久遠寺は五重塔風の現代建築で、1階が受付、事務所、ご供養グッズの売り場で、2階が火葬場、3階が斎場で4階5階が納骨堂なんです。棺も大中小とあるんですよ。オロチーロは小型犬だったから小ですみましたが、覗き窓つきの桐の棺で3万円でした。納骨堂も何段もの棚がやはり大中小に区分けされていて祭具も大中小とあるんです。小さい区画の権利が8万円、位牌戒名料が6万円・・」
「ねえねえ、戒名まであるの?」
綾の声が舞い上がる。
「はい。オロチーロ輝道忠犬居士・・です。輝の1字を入れてもらって3万円跳ね上がりました」
「まあ、踏んだり蹴ったりだこと」
ふんだくったり、ぼったくったり・・だろが、と吾輩はソファーで寝たふりしながら
綾の言葉を訂正する。
「でも、主人はオロチーロが喜ぶと満足していました。供養堂は満杯になったら古い順に奥多摩の山中にある宇宙久遠日月の塔という永代供養塔に祀り直されます。その永代供養料が15万円。土佐犬のような大型犬だと30万円とられます。まっ、なんだかんだと100万円近くかかりました。100ヶ日の合同供養にも行ってきて1万円包みました。1周忌のご案内もくるそうです」
「凄い商法ねえ」
綾がため息をついた。
「でも、この業界、宇宙久遠寺のように設備がよく、サービスが至れり尽くせりのところは別にして今は乱立気味なんですって。、キリの業者になるとワンボックスカー1台で荒稼ぎをやってるみたいですよ」
「どんな風にやるの・」
「ワンボックスカーの中に火葬炉を設置してあるそうです。ペットの遺骸を引き取り、一回りするうちに焼きあがります。戻ってきて車に用意の祭壇を出して飾り、同乗の坊さんが読経、終わればお骨もこちらで埋葬します、と10万円貰うとすぐ引き揚げるみたいですね」
「ふうん。1日6つ7つもこなせば荒稼ぎねえ」
「ところで、宇宙久遠寺の管長の姓は野見島でした。オロチーロの葬儀のとき、ごく若い坊さんもいてお手伝いしていました。高校生あたりのバイトかな、と思って訊いてみたら息子さんでまだ中2でした」
「その管長のところへ乗り込んでやろうかしら」
不意に、綾は母性を取り戻し、声を荒げた。
「おやめになったほうがいいですよ。沙乃ちゃんはいくつも年上ですから、逆に噛みつかれます」
沙乃については今後の展開に大いに興味があるが、ひとまずこの場を離れ、モンちゃんはがいる気配の隣家のアジサイの谷間をおとずれることにする。
吾輩もそう思うとうなずきながら立ち上がった。

〈続く〉

志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ KIBA BOOK 志茂田景樹事務所
 
 

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