パティオ広場の夜は更けて1の続き パロディ吾輩は猫である2010 志茂田景樹の隊長のブログ作品集|志茂田景樹のWeb絵本-読み聞かせ劇場|しもだ-かげき|直木賞-児童書-作家

直木賞・絵本・児童書・作家|志茂田景樹のWeb絵本-読み聞かせ劇場直木賞 絵本 児童書 作家|志茂田景樹のWeb絵本-読み聞かせ劇場 ぞうをクリックして、Web絵本「ぞうのこどもがみたゆめ」をみてね。 ◆みつこおばさま◆ クリックすると、全国読み聞かせ・講演イベントスケジュール集がみれますよ。 ◆志茂田隊長◆ Web絵本読み聞かせ劇場へようこそ。ぼくをクリックすると、プロフィールが見れるよ。 クリックするとトップページに戻るよ。 ぼくをクリックして、Web絵本「ひかりの二じゅうまる」をみてね。 わたしをクリックして「Web絵本」がみれるよ。 直木賞 絵本 児童書 作家|志茂田景樹のWeb絵本-読み聞かせ劇場 白鳥をクリックして、Web絵本「つきとはくちょうのこ」をみてね。 ぼくをクリックして「Web絵本」がみれるよ。

志茂田景樹の隊長のブログ作品集 No.2

 

パティオ広場の夜は更けて1の続き


東京駅に着いたことは手提げバスケットが持ち上げられたことでわかった。
しかし、吾輩は絹の布にくるまれているゆえ、東京駅の様子はさっぱりつかめぬ。
移動に数分かかり、手提げバスケットが置かれると同時に、
「元麻布までやって」
と、のどかな綾の声が響きわたった。
また速いものに乗せられたか、と吾輩が察してまもなく手提げバスケットの蓋がゆっくりと開けられた。
「拾麿、お前の新しいお家にまもなく着くわよ」
吾輩は体を揺すって絹の布を払い、前足を手提げバスケットの縁にかけ、綾の顔をしげしげと見上げた。
先程、うんと速い乗り物の中で富士山を見させてもらったときは、綾の顔を見る暇はなかった。
今ちゃんと見るとなかなかの美人で、わが主人、いや、もはや元主人の砂御門華朋が大好きな女優沢口靖子似である。
ただ、やや出目気味で、瞳が左右にきょときょと動くところが気に入らない。どうも頭の働きのほうはさほどよくはあるまい、とそのとき生後2ヶ月の吾輩は喝破したが、それはやんぬるかな的中していた。
む、そんなことはどうでもいい。
「ここにお乗り」
と、綾は自分の膝をたたいた。
吾輩は手提げバスケットをするりと抜けて綾の膝に飛び乗った。
綾はよい子よい子と吾輩の頭をなでまわしながら、
「ほら、あれが東京タワーよ」
と、首を曲げ、頭を低めて窓の外を覗き上げた。
見ると、交差点のわりと間近から樹林越しに巨大な鉄の塔が天空を突き刺すがごとく聳え立っている。
さすがの吾輩も目がくらくらした記憶がある。
「日本一高い建物よ。おちついたら夜景を見に連れていくからね」
綾は調子よく言ったが、3歳の夏を迎えた今もってその約束は果たされておらぬ。
もっとも、この間に東京スカイツリーの建設が始まり、吾輩はこっちが完成したらこっちのほうに上ってみたいと思っている。
しかし、綾は東京スカイツリーは嫌いなようで、今朝も朝食の席で沙苦里にこんなことを言った。
「昨日、向島でお茶席によばれ、そのときに400メートルを超えた東京スカイツリーを見上げてきたけど、なにかこっちの気持ちまで不安定になるわね。あれは箸を立てたような感じで美しくないもの。でくの坊が背伸びしているみたいで、安定感に欠けるわ。東京タワーや、エッフェル塔が美しいのは見ていてあきない安定感があるからよ。スカイツリーは見っともないわ」
吾輩も一理あるような気がしないでもなかった。
いや、また道草食ったか。話を急ごう。
夏目家は麻布十番から暗闇坂を上がりきってすぐの右手一画にある。仙台坂上に抜ける道路に面して6階建てながらかって億ションとして鳴らした高級マンションが建ち、その裏手に3階建ての低層共同住宅が2棟ある。
その1号棟1階が夏目家だった。
到着したときは京都烏山の砂御門家に比べてあまりの貧相さにニャンとも言いようがなかったが、1棟すべてではなく、各階2世帯ずつで1階の半分が夏目家だと知ったときには唖然とし、その反動でもう闇雲におかしくて大笑いするしかなかった。
なに、猫がどうやって大笑いするか、疑問だと。簡単なものさ。顎の骨を振動させると関節ががケタケタ鳴る。それが猫の大笑いであるぞよ。
とにかく、砂御門家の敷地なら50棟は建ち並ぶだろう。
吾輩は綾に抱かれて屋内に入り、リビングルームのソファーに下ろされた。
対面のソファーに中年男と16,7歳の女の子がかけていた。
中年男は白髪混じりの頭髪をもじゃもじゃにして、メタルフレームの眼鏡をかけていた。鼻も高く、口許も引き締まっていたが、眼鏡の奥で垂れ目の金壺眼がさもしげで顔全体の印象を軽くしている。
「君が拾麿かね。私は夏目沙苦里、星泉大学人間科学部で准教授をしている。ま、こんな家でよかったら住んでみることだね」
今更、京都の烏丸には帰れないんだよ、と吾輩は口をとんがらかしたと思う。
「こちら長女の沙乃なの。松竹梅女子大付属に通ってるの」
綾が自慢げに紹介したが、目がちっちゃく両の頬がぶうっとふくらみ、小さな団子をつぶしたような鼻はその両頬に埋没している。そして、おかっぱの髪は毒々しいほどの金髪だった。
吾輩はあやうくケタケタ笑いだしそうになった。それを察したのか、沙乃は手にしていた紙ヒコーキを吾輩めがけて飛ばした。
吾輩は右前足でその紙ヒコーキを払い落とした。
「気に入らない、この猫」
沙乃は吾輩をにらみつけた。
ちっこい目なのに、一瞬、きらりと針の先が反射するように光った。
吾輩は沙乃に金髪フグというあだ名を奉った。
「沙乃の弟で判官という息子がいるんだけど、わけあって部屋から出てこないの。いずれね」
と、綾は微妙に口を濁した。
こうして夏目家4人家族と吾輩の共同生活が始まったのである。
これからは現在の話になる。

〈続く〉

志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ KIBA BOOK 志茂田景樹事務所
 
 

もっと詳しく読みたい方はこちらへアクセスしてね!
http://plaza.rakuten.co.jp/odata325juk/diary/

【←隊長のブログ作品集・一覧に戻る】
Copyright© Office Shimoda Kageki 2016 All Rights Reserved.