「平成ようかい九十九夜ものがたり」3 トンビウオ 志茂田景樹の隊長のブログ作品集|志茂田景樹のWeb絵本-読み聞かせ劇場|しもだ-かげき|直木賞-児童書-作家

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志茂田景樹の隊長のブログ作品集

 

「平成ようかい九十九夜ものがたり」3


トンビウオ

志茂田景樹


タツヤはアメリカに単身赴任したおとうさんがこいしくてたまりません。

おかあさんがいろんなところへつれていってくれますが、キャッチボールや、サッカーの練習はおとうさんでないとできないのです。 庭のしばふに出てサッカーボールであそんでいると、空で、

ピーヒョロロー

と、トンビが鳴きました。

見あげると、へんなトンビが輪を描いていました。

羽がとうめいで、飛行機のつばさのようです。

へんなトンビはぐんぐん急降下してきました。

あっと思ったときにしばふのテーブルに飛行機のように下りてとまりました。

「エエッ、トビウオじゃないか!」

タツヤは目を見はりました。

羽はとまったときにたたんでいました。

頭はトンビですが、そのほかはトビウオのかたちそのものです。

でも、体にうろこはありません。

アシカのようにごくみじかい毛におおわれています。

タツヤはこわごわ近づきました。


タツヤくん、アメリカのおとうさんのところへ行こうか」

へんなトンビは、いきなり口をききました。

「えっ、なぜぼくのおとうさんのことを知ってるの?きみはだれ?」

「おれはトンビウオというようかいさ。ようかいだからおとうさんのことも、きみがなにを考えているかもわかるんだよ。おとうさんにあいたいだろ?」

「そりゃあいたいさ。でも、かんたんに行けないだろ」

「つれてってやるよ。ばんごはんの買い物に行ったおかあさんが帰ってくるまでに戻れるさ」

「ほんとう?」

タツヤは半信半疑でした。

「テーブルに両手をついてさかだちするときのように飛びあがってごらん」

言われたように、タツヤはやってみました。

すると、らくにさかだちができ、さらに回転して両足がテーブルにつきました。

タツヤは身長10センチぐらいの小人になっていました。


「さあ、客席に乗りな」

トンビウオの背びれがジェット戦闘機のそうじゅう席のようになっていました。

タツヤはたたまれた羽に足をかけてそうじゅう席のような客席に乗りこみました。

ひらいていた風防ガラスが音もなくしまりました。

ヒューン、とトンビウオは飛びたちました。

ぐいぐい上昇し、はるか下に富士山がふせたさかずきのように小さく見えます。

たちまち太平洋の上空に 出ました。

大きな旅客機をおいぬきながら、トンビウオはさらに高くあがって飛びました。

行く手が灰色にかすんでいました。

「すごい暴風雨だ。海にもぐるぞ」

トンビウオの声が客席にひびきわたりました。

トンビウオはいなづまのような速さで急降下し、海につっこみました。


タツヤは風防ガラスごしに外を見て、

「すごい!」

と、さけびました。

トンビウオは深海を走っているのに、外はあかるく、ようすが手にとるように見えるのです。

トンビウオの体が光をはなっているためのようです。

ともに長さ18メートルぐらいのマッコウクジラとダイオウイカがたたかっていました。

そして、マッコウクジラの大きな口にかまれて、ものすごい量の血を流したところでした。

トンビウオは上昇にうつりました。

海から飛びあがったところは、もうアメリカの西海岸の近くでした。


おとうさんは、庭に立てたあつい板にむかって、ボールをなげていました。

はねかえったボールをひろい、またなげました。

「板をあいてにキャッチボールをやってるよ。もっと近づいてみるかい?」

「うん、うんと近づいて」

「外へは出られないよ。出ると、きみは小人のまんまでもとに戻れなくなるんだ」

トンビウオはぐーんと下りて、屋根の高さのところでせんかいしました。

あっ、とタツヤは声をあげました。

あつい板にはミットをかまえてかがんだタツヤの絵が描かれていておとうさんはそのタツヤとキャッチボールをしていたのです。

「トンビウオ、もういいよ。日本へ帰ってくれないか」

タツヤの声はうるんでいました。

じぶんよりもおとうさんのほうがもっとさみしい思いをしていることに気づいたからです。


タツヤはもとのしばふの庭に立ち、ぐんぐん小さくなっていくトンビウオに手をふりました。

「トンビウオ、ありがとう。またあおーよー!」

買い物からかえったおかあさんが出てきました。

「タツヤ、元気な声をはりあげてどうしたの?」

おかあさんは、空を見あげてききました。

もうトンビウオは、ごまつぶほどになっていました。

「とてもいいことがあったんだよ」

タツヤは、にこにこ笑ってこたえました。

(おしまい)

志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ KIBA BOOK 志茂田景樹事務所
 
 

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