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志茂田景樹の隊長のブログ作品集 No.14

 

パティオ広場の夜は更けて10


ザ・ボエムに隣接して新築中のビルがある。
そのビルの前で、カップルがキスをしている。
男は長身の黒人だった。女は日本人かどうかわからないが、アジア系には間違いない。
「うーん、うーん、あれが愛の証で行う接吻か。初めて見た」
トトロがうなりながら、息荒く言った。
「愛の証かどうかわからないけど、ほんとうに初めて見たの?」
ソンギリがやや小ばかにしたように、尻尾を一振りさせてトトロを見た。
「吾輩たちのテリトリーには、ああして路上でキスする者たちはいないんだよ。暗闇坂から仙台坂上に抜ける道こそ、夜中でも車が通るが、屋敷街の道を夜の夜中に歩くのは吾輩たちぐらいなもんだから。トトロはご覧のように超弩弓のメタボだし、麻布十番の街に降りてきたのはこれが初めてなんでね」
吾輩はトトロをかばってやった。
「でも、お前んとこの飼い主は夫婦二人きりだろ。キスなんかしょっちゅうじゃねえのか?」
それまでずっとソンギリの顔を見ていた弁天丸がちらっとトトロを見て訊いた。
そして、トトロの言葉を待たずにソンギリに目を戻した。
実は、弁天丸はソンギリに片思いの恋をしているのである。
吾輩は、今日の昼間、そのことを弁天丸から打ち明けられて初めて知った。
「重成も竜子も俺以上の肥満体だよ。お互いのお腹が邪魔して向きあってのキスなんかできないよ」
「あんなふうにぶっちゅっと口を合わせたって、俺たちは気持ちよくもなんともないけど、人間はあれに何の意味を持たせてんだろ?」
ツキノワが胸の白いツキノワを2,3回引っ掻きながら大家の顔を窺った。
「それはな、お前・・」
大家はもったいぶったのか、一息入れて話し出した。
「人間は饒舌で知られる動物よ。愛を囁くにしても百万言を費やす男もいれば、いちいち、ほんとうに、とか、どのように、とか、お金に換算したらどのくらい、とか訊き返してやまない女もいる。お互い言ったことに責任を持たせる意味で接吻をするんだ。つまり、約定書に判を捺しあうことと同じなんだ」
「なーるほど」
単純なツキノワは感じ入って大きくうなずいた。
「さて、夜も更けてきたことだし、モンちゃんを励ます会について・・」
吾輩が話題を本題に戻そうとしたとたん、フーテンのノラが時ならぬ大声で口を挟んだ。
「モンちゃんといやあ、今日の昼過ぎに毛利庭園の池の畔で見かけたぜ。これ以上痛ましいって顔はねえほどに憔悴しきってなあ、ローレライを歌っていたぜ。ありぁ、ほんとうに励まさなきゃ、病気になっちゃうぜ」
フーテンのノラの言葉に、みな言葉を失った。
人間は猫が歌うとは思ってもいないらしいが、嬉しいとき悲しいときに猫もよく歌う。そのときは特別の声帯の使い方をする。
人間は吾輩たちの喉筋をよくなでるが、そのとき、ゴロゴロ発声する。
あの発声法で歌うのである。
ようやく午前2時過ぎ、モンちゃんを励ます会の場所と時間が決まった。
明後日の夜9時、場所は元麻布プラトンレジデンスの中央庭園。
みんながどのようにモンちゃんを励ますか楽しみである。
散会し、吾輩も含めてみんなそれぞれに家路についた。

〈続く〉

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