パティオ広場の夜は更けて8の続き パロディ吾輩は猫である2010 志茂田景樹の隊長のブログ作品集|志茂田景樹のWeb絵本-読み聞かせ劇場|しもだ-かげき|直木賞-児童書-作家

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志茂田景樹の隊長のブログ作品集 No.12

 

パティオ広場の夜は更けて8の続き


午前0時ちょうどに年増の三毛猫ソンギリが現れて、息を弾ませて吾輩に言った。
「ご免ご免、宵っ張りの蘭子がなかなか寝つかなくて、寝酒のハイボール8杯目の半分を残してようやく寝たの」
7歳の年増ソンギリの飼い主の蘭子はやはり46歳になる年増で、株のブローカー、いや、一本どっこのデイトレーダーをやっている。
市場が開いているときは8台のパソコンを使い、一瞬の滞りもなく指を躍らせ、売買に血道を上げているという。
市場が昼休みのときも後場の予測に余念がなく、カップラーメンをかっこみながらパソコンを操作しているらしい。
「我が家は築52年の7階建てマンションの3階なの。今や、この麻布十番2丁目では最古のマンションになったわ。でも、蘭子は預金を4億3、700万円あまりしてるの。酔うと、私にその時点の預金高を話すのよ。人間の言葉はわからない、と思い込んでのことみたい。本来、蘭子はとても猜疑心が強いの。それがデイトレーディングにはいいほうに作用しているみたい。ちょっとでも下がればパシパシとソンギリしちゃうの。私にソンギリと命名するほどだから、自分でもソンギリ蘭子って自称している。早めのソンギリは株で損をしないためのコツみたいね」
いつだったか、ソンギリは顎に右前足の甲をあてながら、少しうんざりしながら、しかし、ときに自慢げに蘭子の仕事ぶりを語ったことがある。
それはともかく、ソンギリの登場で出席予定のメンバーは全部、集まった。
元麻布グループから吾輩、キーオ、トトロ、弁天丸の4猫、麻布十番グループから商店街の老舗洋品店ハタムラの赤トラの飼い猫である通称大家、トン坊、ソンギリ、焼酎専門のショットバー甲突川の飼い猫で黒猫のツキノワの4猫。
おっと、1猫、忘れるところだった。
2丁目の街中の小公園阿網代公園を主な居場所にしている野良猫のフーテンのノラも、大事な仲間である。
「拾麿や、今夜はおめえが仕切って、進行も務めな」
麻布十番グループの長老でリーダーの大家が吾輩に顎をしゃくる。
今年14歳を迎え、老いてますます口達者で、博覧強記になった。
吾輩はこの大家に助けて貰ったことがある。
夏目家に飼われて五ヶ月かそこいらのころ、かなり、遠出をするようになった吾輩は網代公園を初めて訪れた。
昼下がりで、若い母親と小さな子供のカップルばかりが散らばって7,8組いた。
母親はいずれも服装のセンスがよく、それぞれ子供たちにもオシャレさせていた。
吾輩はまず一周して見回ることにした。
テリトリーにこだわる猫族の性である。
5つぐらいの男の子が砂場に入って両手で砂をすくおうとしたとたん、その子のお母さんが飛んできて・
「いけません、お服もお靴も汚れるでしょう。この公園はじっとお行儀よくしているところなのよ」
と、言いながら抱き上げ、ベンチに連れ戻した。
見ていて吾輩は唖然とした。
公園は体を大いに動かして寛ぐところだし、子供なら砂場で砂まみれになって遊んで当然じゃないか。
当時は公園デビューという言葉も、網代公園がその公園デビューの名所であることも知らなかったから、つかの間、あきれてその母親をにらみつけてやったものである。
吾輩は築山に穿たれたトンネルに入った。
そこに全身の毛がグレーの先客がいて、ごろりと横になっていた
「なんだよ、若造。断りもなく入ってくんなよ」
全身がグレーの猫はすくっと立ち上がった。
筋肉がたくましく、荒んだ気配を放っている。
「ここはあなたの住まいですか?」
吾輩はたじたじとなりながらも、烏丸砂御門家生まれの矜持を見せながら訊き返した。
「管理は区だがな。住まいにしているのは俺よ」
グレーの猫は吾輩に近づいてきた。
吾輩は後退した。
怖かったわけではない。グレーの猫は生ゴミの山から転げ落ちてきたような悪臭を放っていたのである。
「俺の住まいにきたのは挨拶にきたってことか」
「あ、申し遅れましたが、麿は、いや、僕は元麻布2丁目に住む拾麿と言いまして・・」
「おう、上等なところに住んどるのう」
ゲケ、ゲケ、ゲケ、とグレーの猫は顎の関節を震わせて笑った。
「よろしくお願いします」
「それで・・」
グレーの猫は何かを催促するように、吾輩の目を覗き込んだ。
「挨拶は終わりましたけど・・」
「べら棒め、ざけんな、この餓鬼!」
グレーの猫はパッと吾輩の前に飛んで、いきなり右前足で吾輩の左耳下あたりに猫手チョップを放った。
吾輩はギャンと悲鳴を上げた。
「挨拶というのはな。言葉だけじゃ完結しねえのよ。実がねえとな、実がねえと」
「実がねえと、と申しますと?」
「この野暮天野郎。俺は北海道産のホッケが大好きなんだが、ホッケの1枚も持ってくんのがここの常識なんだよ。まっ、サラミソーセージでもいいけどよ」
「御免なさい」
吾輩はこれ以上関わりあうのはまずいと思い、じりじりと後退した。
「逃げんなよ、若造」
グレーの猫は掴みかかってきた。
このとき、何の騒ぎだね、と顔を覗かせたのが大家で、大家は吾輩を見るなり、
「まだ若いじゃないか。フーテンのノラよ」
と、言ってグレーの猫をたしなめた。
「おいらのグループはな、騒ぎを起こさないという約束であんたがここに住むことを認めたんだ。約束を守れないというになら、今日限り出ていって貰うよ」
グレーの猫フーテンのノラは以来、吾輩に意地悪をしなくなった。
それどころか吾輩より2歳年長なのに、今では吾輩を立ててくれるようになった。
さて、過去の話はやめにして、今夜の議題に入らねばならぬ。
「みんな、熱帯夜なのにご苦労さん。実はモンちゃんのお母さんが死んで、モンちゃんがひどく落ちこんでいる。励ます会をやろうと思うんだが、みなの意見を聞きたい」
吾輩がことばを切ったとたん、トン坊が、
「あ、我が家のばあちゃんだ。徘徊を始めたんだ!」
と、叫んだものだから、みんなそっちに目をやった。

〈続く〉

志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ KIBA BOOK 志茂田景樹事務所
 
 

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